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長距離論文 2023年読了 約6分

高地トレーニングは有酸素能力を上げるか

平均ではVO2maxとヘモグロビンの改善が示されました。ただし、遠征の高さと日数を誰にでも処方できるほどの強い証拠ではありません。

先に結論

  • 高地トレーニングは低地でのトレーニングより、最大酸素摂取量とヘモグロビンを高める方向でした。
  • 「高地で生活し、低地で高強度練習する」Hi-Lo型が、採用研究内では有利な傾向でした。
  • 約3週間・約2,500mはサブグループの傾向であり、個人にとっての最適条件を証明したものではありません。

どんな研究か

2023年のメタ分析です。1979年から2020年9月までの研究を探し、選手の高地トレーニング前後、または低地対照群との比較を報告した17報を統合しました。最大酸素摂取量(VO2max)とヘモグロビン濃度を主な結果として扱っています。

採用研究
17報
検索期間
1979年〜2020年9月
主な指標
VO2max
血液指標
ヘモグロビン
注目した型
Hi-Lo
期間の傾向
約3週間

用語メモ:VO2max
運動中に体が利用できる酸素量の最大値です。有酸素能力の一指標ですが、レース成績を単独で決める数値ではありません。

用語メモ:Hi-Lo
Living High–Training Lowの略です。高地で生活して低酸素刺激を得ながら、強度の高い練習は低地で行う方法を指します。

何が分かったか

高地トレーニングではVO2maxの標準化平均差が0.67(95%信頼区間0.35〜1.00、p<0.001)、ヘモグロビンが0.50(0.11〜0.90、p=0.013)でした。標準化平均差は異なる測定単位を共通尺度に直した値で、正の値は高地群に有利な方向です。

約2,500m・約3週間の読み方

サブグループ分析では、約2,500mで約3週間のHi-Lo型が他の方法より良い結果でした。ただし、サブグループ分析は、研究を後から条件別に分けて見た比較です。高さや期間だけを無作為に直接比べた試験とは異なるため、「この条件が唯一の正解」とは言えません。

血液の変化だけが競技力ではない

ヘモグロビンは酸素を運ぶ赤血球中のたんぱく質です。増加は酸素運搬に関係しますが、走技術、トレーニングの質、回復、帰還後のタイミングも成績に影響します。この論文が示したのは主に有酸素能力の指標であり、レース記録の一律な改善量ではありません。

実践へどう読み替えるか

  1. 高地を「練習の代替」にしない。低酸素環境で高強度走の質が落ちるなら、Hi-Loという考え方が示すように、目的別に環境を使い分けます。
  2. 遠征前後を含めて計画する。移動、睡眠、食事、普段の練習量が変わります。高地の日数だけでなく、そこで何をどれだけできるかを確認します。
  3. 鉄状態などの健康課題は専門家と扱う。本研究は個人の医学的評価ではありません。息苦しさ、体調不良、貧血が疑われる場合に自己判断で高地へ行く根拠にはなりません。

この研究だけでは言えないこと

  • 採用研究の数と質には限りがあると著者自身が述べています。
  • 競技種目、競技レベル、高度、滞在時間、通常練習が異なります。
  • VO2max・ヘモグロビンの改善が、すべての選手のレース記録改善を保証するわけではありません。
  • 個別の高地反応、帰還後にレースをする最適時期、健康上の安全性はこの分析だけでは決まりません。

原論文

Chen B, Wu Z, Huang X, et al. “Effect of altitude training on the aerobic capacity of athletes: A systematic review and meta-analysis.” Heliyon. 2023;9(9):e20188.