先に結論
- 高地トレーニングは低地でのトレーニングより、最大酸素摂取量とヘモグロビンを高める方向でした。
- 「高地で生活し、低地で高強度練習する」Hi-Lo型が、採用研究内では有利な傾向でした。
- 約3週間・約2,500mはサブグループの傾向であり、個人にとっての最適条件を証明したものではありません。
どんな研究か
2023年のメタ分析です。1979年から2020年9月までの研究を探し、選手の高地トレーニング前後、または低地対照群との比較を報告した17報を統合しました。最大酸素摂取量(VO2max)とヘモグロビン濃度を主な結果として扱っています。
- 採用研究
- 17報
- 検索期間
- 1979年〜2020年9月
- 主な指標
- VO2max
- 血液指標
- ヘモグロビン
- 注目した型
- Hi-Lo
- 期間の傾向
- 約3週間
用語メモ:VO2max
運動中に体が利用できる酸素量の最大値です。有酸素能力の一指標ですが、レース成績を単独で決める数値ではありません。
用語メモ:Hi-Lo
Living High–Training Lowの略です。高地で生活して低酸素刺激を得ながら、強度の高い練習は低地で行う方法を指します。
何が分かったか
高地トレーニングではVO2maxの標準化平均差が0.67(95%信頼区間0.35〜1.00、p<0.001)、ヘモグロビンが0.50(0.11〜0.90、p=0.013)でした。標準化平均差は異なる測定単位を共通尺度に直した値で、正の値は高地群に有利な方向です。
約2,500m・約3週間の読み方
サブグループ分析では、約2,500mで約3週間のHi-Lo型が他の方法より良い結果でした。ただし、サブグループ分析は、研究を後から条件別に分けて見た比較です。高さや期間だけを無作為に直接比べた試験とは異なるため、「この条件が唯一の正解」とは言えません。
血液の変化だけが競技力ではない
ヘモグロビンは酸素を運ぶ赤血球中のたんぱく質です。増加は酸素運搬に関係しますが、走技術、トレーニングの質、回復、帰還後のタイミングも成績に影響します。この論文が示したのは主に有酸素能力の指標であり、レース記録の一律な改善量ではありません。
実践へどう読み替えるか
- 高地を「練習の代替」にしない。低酸素環境で高強度走の質が落ちるなら、Hi-Loという考え方が示すように、目的別に環境を使い分けます。
- 遠征前後を含めて計画する。移動、睡眠、食事、普段の練習量が変わります。高地の日数だけでなく、そこで何をどれだけできるかを確認します。
- 鉄状態などの健康課題は専門家と扱う。本研究は個人の医学的評価ではありません。息苦しさ、体調不良、貧血が疑われる場合に自己判断で高地へ行く根拠にはなりません。
この研究だけでは言えないこと
- 採用研究の数と質には限りがあると著者自身が述べています。
- 競技種目、競技レベル、高度、滞在時間、通常練習が異なります。
- VO2max・ヘモグロビンの改善が、すべての選手のレース記録改善を保証するわけではありません。
- 個別の高地反応、帰還後にレースをする最適時期、健康上の安全性はこの分析だけでは決まりません。
原論文
Chen B, Wu Z, Huang X, et al. “Effect of altitude training on the aerobic capacity of athletes: A systematic review and meta-analysis.” Heliyon. 2023;9(9):e20188.