先に結論
- 高負荷の筋力トレーニング、プライオメトリクス、複数手法の組み合わせは、ランニングエコノミーを改善する可能性があります。
- 中程度以下の負荷やアイソメトリック単独では、対照群を上回る改善は確認されませんでした。
- 改善したのは「同じ速度をより少ない酸素消費で走れるか」という指標であり、レースタイムの改善を直接保証する結果ではありません。
どんな研究か
2024年に『Sports Medicine』へ掲載されたシステマティックレビューとメタ分析です。中・長距離ランナーを対象とした研究を集め、筋力トレーニングの方法ごとにランニングエコノミーへの影響を比較しています。
- 対象
- 中・長距離選手 652人
- 競技レベル
- 中程度〜高水準
- 介入期間
- 6〜24週間
- 頻度
- 週1〜4回
- 評価
- ランニングエコノミー
- 確実性
- 主に中程度
用語メモ:ランニングエコノミーとは、一定速度で走るときに必要な酸素量やエネルギー量の少なさを表す指標です。
何が分かったか
高負荷トレーニングでは小さな改善、複数の筋力トレーニング手法を組み合わせた方法では中程度の改善が見られました。プライオメトリクスは時速12km以下の走速度で小さな改善を示しています。
一方、サブマキシマル負荷とアイソメトリックでは、走る練習だけを行った対照群と比べて明確な改善が確認されませんでした。高負荷トレーニングの効果は、VO₂maxが高い選手や速い走速度で大きくなる傾向も報告されています。
練習へどう読み替えるか
- 目的を「筋肥大」だけにしない。走効率を狙うなら、高負荷種目やジャンプ系を、競技練習と両立できる量で組み込む考え方が候補になります。
- 6週間以上の単位で評価する。研究の介入は6〜24週間です。数回の実施だけで効果を判断できる研究ではありません。
- 走行練習を置き換えない。筋力トレーニングは中・長距離練習への追加として検討されたものです。競技特異的な走行練習の代替ではありません。
この研究だけでは言えないこと
- 最適な種目、セット数、負荷を全選手に共通して決めることはできません。
- ランニングエコノミーの改善量が、そのままレースタイムの改善量になるとは限りません。
- 成長期の選手、筋力トレーニング未経験者、故障から復帰中の選手には個別の調整が必要です。
- トレーニング方法ごとに含まれる研究数や質が異なります。
原論文
Llanos-Lagos C, Ramirez-Campillo R, Moran J, Sáez de Villarreal E. “Effect of Strength Training Programs in Middle- and Long-Distance Runners' Economy at Different Running Speeds: A Systematic Review with Meta-analysis.” Sports Medicine. 2024;54(4):895–932.